新居浜西高校だよりR04

１０月２６日（水）

今月の校長先生おすすめ図書です！

『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』（村上春樹）新潮文庫

（くすのき文庫蔵）

　村上春樹はストーリー展開がとにかく面白く、息つく暇もないように読み進んでしまうノーベル賞候補の作家なのだが、私はちょっと苦手で、あまり多くの作品を読んでいない。ストーリーは面白いのだが、苦手だと感じる場面が多く、また読み終えても何か心に訴える言葉に出会ったと感じられないからだ。でも、この「世界の終わり……」の小説は、作者のメッセージも伝わってきたし、読んでいて時間を忘れさせてくれる極上の小説だった。ここ１か月ほど、車の運転をやめていたので、出張や帰省はJRを使っていた。特に実家の北条まで帰るときは、特急券がもったいないので、２時間普通列車に揺られていたが、全く負担に感じなかった。やはり、電車に乗るときは文庫本が重宝する。たっぷりと時間があったので、上・下巻合わせて881ページの長編も苦も無く読了した。静寂な幻想世界と波乱万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす村上春樹の不思議ワールド。旅の風情は感じられなかったが、いつもの予讃線が私の頭の中ですごいことになっていた。