今月の校長先生おすすめの図書
2022年7月15日 07時50分7月15日(金)
『今月の校長先生おすすめの図書』 !
『おいしいごはんが食べられますように』(高瀬隼子)講談社
職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。ままならない人間関係を、食べものを通して描く傑作。
三人の視点で物語は展開していくのだが、タイトルと本の表紙にだまされて、ほっこりしたいなあ、なんて思って手に取ったら、完全に裏切られる。ほっこりどころか、「おいしいごはん」のくせに、すっごく後口が悪いなあと、深~く考えさせられてしまう作品。特に実際に働いている社会人にとっては、読後感は、決しておいしいとは言えないだろう。 登場人物三人にとっての『おいしいごはんがたべられますように』という言葉の意味は、三人それぞれで捉え方が違う。特に、二谷の心の中を表現した結末の一文を読み終えた後、 押尾が言っていた「おいしいごはんが食べられますように」の意味を考えたら、ぞっとしてしまう読者もいるのではないだろうか。作者の前二作より、格段にテーマがはっきりしており、かつ新居浜に対する思いも新居浜弁も全く登場しない普遍的な作品。
図書館にあります。しかもその本は、高瀬さん本人から新居浜西高校に寄贈された本です。2年連続で芥川賞の候補となった高瀬さんですが、芥川賞の選考日は7月20日(水)です。ぜひ、その日の夜は「おいしいご飯が食べれますように」……。今年は、芥川賞受賞です。(ここは新居浜なので、新居浜らしく「ら抜き言葉」でタイトルを変えてみました。)